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文/大畑 幸子

 
1. HOLD ON (It's Alright) 試聴
 今回のレコーディングをスタートさせたのが、この曲。バンドと共に"せ〜の"で音を出すやり方を方向づけた1曲でもある。全体を彩るボブ・ディラン・テイストがとても味わい深い。グルーブ感溢れるバンド・サウンドと、投げやりな歌い回しだが、内面にあるビート感覚を武器に鋭い説得力を持った桑田のヴォーカルがグイグイと心の奥に入り込んでくる。"大人の漫画、風刺的作風"と桑田が言うように、世の中のあり方を辛辣な目で捉えた歌詞も秀逸だ。まさに今作の扉を開いた象徴的な楽曲だ。

 
2. ROCK AND ROLL HERO 試聴
 ポップでドライヴ感あるリフを軸に展開される、アルバムのタイトル・チューンとなったグラムロック・ナンバー。アメリカの庇護のもとにどんどんきな臭くなっていく日本への憂いと皮肉。またそんなアメリカの音楽に刺激や影響を受けた自分への自嘲が入り交じった歌詞。それらを力強くロックする桑田の存在感と個性が、無敵のカッコ良さを際立たせている。日本人としてのアイデンティティをも投げ掛けた、強烈なインパクトを誇る1曲。

 
3. 或る日路上で 試聴
 ヘヴィなファンク・ビートに乗せて、日常生活で誰の身にも起こりうる不条理な世界をシュールな感覚で歌ったナンバー。ささいなことで切れてしまう現代人の自制心のなさや、自分勝手になっていく人の心理を見事に描ききっている。

 
4. 影法師 試聴
 ジョン・レノンを彷彿させるサウンドの世界観と、透き通るほどの優しさや慈愛に満ちた目線で見つめた歌詞が印象的なラヴソング。狂気の叙情性を感じるトニー・ヴィスコンティばりの幻想的なストリングス・アレンジが、サウンド全体にコクのあるエモーショナルな表現をもたらしている。

 
5. BLUE MONDAY 試聴
 ラテン・フレーバーたっぷりのロック・サウンドの中でひときわ鮮明に輝いているのが、ドアーズを思い起こさせる歪んだオルガンの音色。ライヴ感あふれるダイナミックな演奏が楽しめるナンバーだ。コーラスにLOVE PSYCHEDELICOが参加。この曲に対する桑田のビジュアル的なイメージは、ボブ・ディランのライヴにジャニス・ジョップリンが客席から飛び入り参加したというものらしいが、まさにそんな光景が目に浮かんでくるようだ。

 
6. 地下室のメロディ 試聴
 60年代後期あたりのヒッピー・ムーブメントやドラッグ・カルチャーを背景にしながら、あの時代にきっとこういう歌があったんだろうなと想定して作った曲。ワイルドなサウンドの中にカラフルなサイケデリック感覚がほんのりと顔を出し、イマジネイティヴな世界へと飛翔したナンバーだ。"Ae−nai(逢えない)""Oboro−ni(おぼろに)"といった、日本語をローマ字標記に置き換えた歌詞が斬新。

 
7. 東京 試聴
 ご存じアルバムの先行シングルとして大ヒットを飾ったナンバー。悲痛なメロディーと呼応するヨーロッパ的なダンディズムと退廃的な匂いを感じさせるメランコリックなサウンドが、風景を一変させるかのような緊張感を放出している。都会人の喪失感や無常観を表現した歌詞が心に迫ってくる。

 
8. JAIL〜奇妙な果実〜 試聴
 享楽に溺れる人間の業をSMという文化になぞらえ、強烈なエロスを撒き散らした切れ味鋭いエネルギッシュなナンバー。キャッチーな曲調とアクの強いビート、全体を貫くドライヴ感溢れるツイン・ギターが印象的だ。ロックの攻撃性と刺激性を十二分に引き出した作品。

 
9. 東京ジプシー・ローズ 試聴
 謎めいたスパイ映画のような雰囲気を感じさせるベースとギターのユニゾン、そしてドラミング。劇的な情感を盛り上げるフルート、効果的なキーボードなどが見事に混ざりあい、空間的な音の広がりを見せたジャジーでハードなナンバー。メロディーの哀感と対比するサウンドのエッジ感がカッコいい。桑田はチャック・ベリーやエルヴィス・プレスリーの洗礼を受けた王道のロックではなく、北欧のロックをイメージしたとか。

 
10. どん底のブルース 試聴
 小倉博和と佐橋佳幸の山弦が参加した、和的な叙情性があふれるアコースティック・ナンバー。小倉の生ギターと佐橋のマンドリンの音色がたまらなく切ない。自分の安泰や利益のためには犠牲もかえりみない、そんな社会のあり方を嘆き、自らもその中のひとりであることを認識しながら社会の矛盾を鋭く突いた歌詞は、悲痛な叫びとともに胸を切り裂くほど。衝撃的な1曲だ。

 
11. 夏の日の少年 試聴
 先行シングル「東京」のカップリング収録曲のアルバム・ヴァージョン。初期のビートルズやザ・バーズなどを思わせる躍動的なフォーク・ロックなナンバーだ。少年の頃のように純真ではいられなくなっている自分への悲哀と自嘲を込めた切ない曲。

 
12. 質量とエネルギーの等価性 試聴
 アグレッシヴでラウドなサウンドが爆裂するヘヴィなナンバーだ。"イデア""ロゴス""ラプラスの魔"ほか聞き慣れないカタカナ言葉を列挙し、自らの名前までも飛び出して、全身でエナジーを放射しながら歌い、瞬発力にまかせてラップしている。そのただならぬ狂気の発露は、リスナーの心をわしづかみするほど、圧倒的な迫力がある。こちらをグイグイと引っ張り込む、その強引さが逆に気持ちいい。

 
13. ありがとう 試聴
 狂気な叫びから一転。桑田を育んだ茅ヶ崎への思いや、自分に関わったすべての人たちへの感謝を綴った、清らかな小学唱歌を思わせるクラシカルなナンバーだ。原由子の温かいピアノの音色とストリングスがあいまって心地よく響いてくる。淡々としながらも、歌そのものを愛でている桑田のヴォーカルには、優しさが満ち溢れていて、聴くほどに安息感をもたらしてくれる。涙のしずくのように美しい隠れた名曲だ。

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