桑田佳祐/白い恋人達 あなたの冬の恋物語
 
4年前の5月、中学時代の同級生だった彼女と5年ぶりに再会し た。それから日に日に想いが強くなっていき、ついに打ち明けた のは7月1日。その場で彼女は、最高の返事をくれた。まさに夏 の始まりとともに、僕らの恋物語は幕を明けた。
理系大学3年の僕と、社会人1年目の彼女。彼女の仕事は夜9時 までで、また彼女の休みが火曜日だったため、毎週のようには会 えなかった。いや、会わないようにしていた。せっかくの彼女の 休日を、僕一人のために使ってほしくない、そう思っていたか ら。
11月、僕の誕生日を迎えた。仕事を抜け出して、彼女はプレゼ ントを僕に渡しに来てくれた。ほんの30分くらいの時間だった けど、めちゃくちゃうれしかった。付き合い始めてから4ヶ月。 この日まで、二人はキスでさえしなかった。そのうちに何となく する日が来るって思っていたし、手をつないで、一緒にいるだけ で、僕は幸せだったし。彼女のことは本当に大好きで、いつまで もいつまでも一緒にいたかった。だから、無理して階段を一段上 ってしまったら、新しい嫌な景色が見えちゃいそうで。このこ ろ、僕は彼女に『色』を感じていた。雪のようにふわふわして、 とても柔らかそうな『白』だった。
クリスマスイブ。彼女は仕事だったから、仕事が終わった後30 分くらい会うことになった。待ち合わせ場所に現れ、僕に体当た りしてきたときの彼女の笑顔は、今まで一番、輝いていた。その 日は30分くらい、たわいもない話をして帰った。
年が明けて、1月の中旬から、僕は大学の定期試験が始まった。 試験期間中は彼女とは会わないことにして、電話も控えるように した。クリスマスイブ以来、一度も会っていなかったけど。もち ろん、彼女の了解も得た。試験が全て終わって、いつものよう に、彼女に電話をかけた。しかしかからなかった。前から番号を 変えると言っていたから、気にしなかった。その日で僕の試験が 終わる事を彼女は知っていたから、夜に彼女から電話がかかって くるだろうと思って待っていた。次の日も、その次の日も。2週 間我慢できた。でも2週間が限界だった。彼女の家に電話するこ とは、彼女に迷惑がかかると思っていたから、付き合い始めてか らは一度もかけたことはなく、本当に最後の手段だと考えてい た。たしか、2月26日だったと思う。夜10時頃、彼女の家に 電話した。仕事からまだ帰ってなかったため、家族の方に、『少 しでも早く電話をくれるよう』お願いし、携帯を握り締めて、彼 女からの電話を待っていた。0時過ぎ頃、番号非通知の電話がか かってきた。彼女だった。2週間の間に、さすがの僕も嫌な想像 はしていたけど、明るい声で『どうしたー?』って聞いてみた が、『会って話さなくちゃ行けないことがあるの』と彼女は深刻 な声で答えた。結局、近々会うことになった。
別れの宣告は、ひな祭りの日だった。久しぶりに会った彼女から 出た言葉は、『好きな人ができたから、別れて』だった。彼女は 説明をしてくれた。クリスマスの日に、彼女は会社の同僚から電 話を受け、泣きながら迫られたらしく、その人がどういう人か僕 は知らないけど、結局、その人を彼女は選んでしまった。しか し、僕への打ち明けから逃げていく間に時間も経ち、彼女とその 人はあっという間に彼女はその人に夢中になってしまったとのこ と。そして、付き合い始めて…。始まりは、あの笑顔から24時 間後のことだった。
諦め切れない僕は、2か月も粘ってしまった。男らしくなかっ た。これ以上は彼女に迷惑になるとやっと気付き、友達としてこ れからも仲良くしようって頼んだ。彼女は了承してくれた。それ が唯一もの救いだった。友達に戻れたはずだった。彼女が了承し てくれたってことは、一つの約束を交わしたのだと思っていた。 でも、彼女へ電話しても、もう出てくれなかった。未練なんかな い、友達として会いたい、話をしたい、嘘だけどそれを伝えるこ ともできなかった。何とかしようとずっと考えていた。月に1、 2回電話してみたり、手紙を書いてみたり。やっぱり男らしくな かった。待ち伏せなんかはしなかったけど、ストーカーの2、3 歩手前だったかもしれない。
今年、彼女が結婚したと聞いた。誰とかは知らない。恋人として 最後に会った日、そう、クリスマスイブのあの笑顔は何だったの か、今でもわからない。きっと、もうわからないままなのだろ う。キスとかSEXは、恋人同士をつなぐ一つの手段なのかも、って 今は思うようになってしまった。僕自身が少しずつ変わってきて いるのだから、彼女も変わってしまったのだろう、と考えるべき なのかもしれない。でもそう思いたくない。その前に確認した い。あの時に感じた彼女の持つ雪のような『白』は何だったのか を。今でも好きだから。
そういえば、雪は白く、
 
 
2001-10-26 とざ
 
 
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