クリスマスイブの日、独り身の私は、ほのかに想いを寄せる彼に
会いにレンタルビデオ屋まで足を伸ばした。
彼はその店のアルバイトくん。ネームタグで仕入れた苗字しかし
らない。でも、今日は聖夜。彼はアルバイトに来ているだろう
か。ドキドキしながら店内に入るとレジから子供と男性の会話が
聞こえてきた。子供は、どうやらいつもビデオ屋に遊びに来てい
る常連の男の子らしい。お母さんに連れてこられているのだろう
か? 男性は、私のお気に入りのアルバイトくんだった。大学生
くらいのそのアルバイトくんは、今時珍しい黒髪の、笑うと少し
えくぼが出る爽やかな青年だ。イブにアルバイトをしている彼
に、女性の影がないってこと? 都合のいい勝手な解釈のせい
か、BGMに流れている「白い恋人達」が気持ちよく心に染み込んで
きた。ビデオを選んでいる振りをしながら、彼らの話に耳を傾け
ていた。
すると男の子は大きな声で叫んだ。「うそだー!!」。
それに対し、アルバイトくんはかなり真剣な声で「本当だよ!俺
が小学校5年生のときにさ、クリスマスにサンタクロースが家に来
て『何が欲しい?』って聞くから、『サンタになりたい』って言
ったんだよ。だからその日から、俺、サンタクロースやってんだ
ぜ」と。思わず笑ってしまった。とってもかわいい、ほほえまし
い嘘だ。本当に熱っぽく男の子に語りかけている。どっちが少年
だか分からない。アルバイトくんは続けた。「信じないならさ、
なんでも言ってみろよー。プレゼントあげるから」。その男の子
は少しうろたえ、悩んでいた。私はその時思いついたのだ。手に
は岩井俊二監督の『ラブレター』を持ち、レジに歩み寄った。そ
して彼にこう言ったのだ。「サンタさん、私に恋人をください。
なんでもくれるんですよね?」と。隣りでは、さっきまで考え込
んでいた男の子がニヤニヤと笑っていた。愛の告白だと、気づい
てもらえただろうか…。
2001-10-26 こばみ
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