桑田佳祐/白い恋人達 あなたの冬の恋物語
 
「未来」

去年の冬です。僕は留学からの一時帰国で久しぶりに日本に帰っ てきました。もう1年間彼女とは遠距離で、手紙やメール、電話 で、逢えないけど日本で一緒に居る時よりもマメに連絡を取りあ いやっと逢えると言う感じです。昔の頼りない自分を克服してる か、美容学校を卒業し国家試験にむけてがんばってる彼女はどう 変わったかが楽しみだなんて、留学中バイトをしながら溜めたお 金でクリスマスプレゼントも用意し、結構いいレストランもイン ターネットを使って予約し、胸躍らせる帰国でした。

空港で待っていた彼女は、その1年前、留学の始まりの日に同じ 場所で別れた時から髪が伸びた他、全く変わっていないように思 えました。僕は長い間逢えなかった時間を取り戻せた様な気分で 、今まで待ってくれてた、辛かった彼女の気持ちに気づかなかっ たんです。そんな自分は、帰国直後、年末のサザンのコンサート のチケットを2人分買って、21世紀を一緒に迎える最後の準備 をしました。

女性は、男性が側にいつも居て幸せになれるものだと思います。 あたりまえの事だけど、電話とかメールだけじゃなくって、一番 大切な事なんです。

「もう遠距離は耐えられない」って聞いたのはクリスマスの1週 間前でした。彼女のために自分の夢を諦めるワケにはいかないし 、留学先でまだやるべき事が残っています。彼女だって国家試験 に合格する為にはがんばらなくちゃいけない時です。今までは黙 っていたけど、遠距離恋愛は負担と束縛にもなってると痛感しま した。もちろん僕も辛かったけど、日本へ永久帰国までがんばれ ると信じていました。でも、彼女にはもう耐えられなかったんで す。

しばらく考える時間をおいて、このまま恋愛を続けて彼女を辛く させてしまう事に終止符を打とうと決断したのは、次に逢ったク リスマスの日。これが5年間付き合った最後の優しさだなんて自 分に言いきかせて、でも「友達に戻ろう」って、僕は頼りない、 曖昧な表現でしか伝える事ができませんでした。辛い日々を繰り 返してしまうのを一番知っている彼女は、ちゃんと一緒に過ごせ るまで別れた方がいいっていう答えに納得してくれました。自分 の事に集中できる様に。まだ二人ともお互いを好きなのに、二人 離れて、負担になってる事から開放されると信じたんです。

別れ話をしたクリスマスの日、さよならを言う前に僕は「”友達 として”サザンのコンサート一緒に行ってくれない?」って聞い てしまいました。さっき泣きやんだ元彼女は、とまどいながらも OKしてくれました。自分はなんて情けないんだって分かってた し、もっと彼女を辛くさせるって分かってたけど、久しぶりの日 本で、20世紀を締めくくる僕の最後のわががままを彼女は聞い てくれました。

サザンの年末コンサートでは、”友達”の僕等に妙な空気が流れ ていたのもつかの間、無邪気に二人戻れました。一緒に行った海 の思い出や、ドライブの時に聞いた曲を素直に楽しみました。
アンコール最後の曲で桑田さんが歌った曲は「TSUNAMI」
見つめ合うと、遠距離・別れっていう空しさに怯えて「友達に戻 ろう」なんて未練タラタラの自分を思いしりながら、忘れれられ ない名曲を必死に聞きました。そして21世紀、自分達の集中す べき事、一人一人の新しい未来に向けて「旅立つ」為にも、コン サート後にちゃんと彼女に別れを告げました。
お互いがんばろうって。

留学先に旅立つ1月の空港で僕は泣きました。彼女の事は忘れな いし、もっと立派になって帰った日にもう一度告白しようと心に 誓って。

元彼女とはそれ以来連絡を取っていません。僕は今はちょうど、 今年の年末に一時帰国の航空券を買った所です。
おとといでした。突然、元彼女から「元気にがんばってる?」っ てメールが。去年の冬は美容師の国家試験に向け努力していた元 彼女は、今はまだ見習いだけど美容師として働いてるそうです。 今年の冬には「友達として」一緒にお酒でも飲もうかって書いて ありました。別れてから、寂しい毎日だけど自分に集中していま す。僕は時間のかかった大学院もあと半年で卒業です。卒業後は こっちでインターンをして、来年の冬には永久帰国、日本で働く 予定でいます。

それまで、心折れないように負けないように、最後に元彼女と約 束した通り必死にがんばります。今も忘れない恋の歌が再び流れ た様な気がします。
 
 
2001-10-16 winter lovers
 
 
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