雪の降らないところで育った私は、雪へのあこがれが人一倍強
かった。寝静まった夜中に人知れず降り続ける雪。荒涼とした野
山に静かに雪が降り積もる。人が「淋しい」という風景に何故か
私はいつもひかれていた。
彼に初めて会ったのは23才の冬だった。一方的な片思い。彼の心
には別の女性がいて、叶うことの無い恋だと思った。
出会ってから5度目の冬が来た。友達とも恋人とも言えない中途
半端な関係が続いていた。
とある金曜日、彼に誘われ友人達と車でスキーに出かけた。ゲレ
ンデに近づくにつれ、起きているのは運転手と私達だけになっ
た。朝方の国道沿いに荒涼とした雪山が見える。それはいつか思
い描いた風景に似ていた。しらず涙がこぼれる。
思えば私はいつも無いものねだりだったのかもしれない。手に届
かないとわかっていても、いやそうであればあるほど、強く思わ
ずにはいられない。寒いのは降り止まない雪のせいだけでは無い
と思った。『もう会うのはこれでやめよう』そうぼんやりと思っ
ていた。
彼が突然つぶやいた。
「雪、きれいだね」
つられてうなづく私。
「またスキー、行こうか」
じっと彼の顔を見つめる私。
「二人で?」
彼は優しく笑ってうなづいた。
出会って10度目の冬が来た。夫となった彼と、今年も二人で雪
山を見にいくのだろう。荒涼とした雪山と降り止まない雪。
でも、あのとき感じた淋しさを今は感じることはない。
2001-10-09 いちえり
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