あなたに初めて会ったのは、17年前のバレンタインデー。
大学卒業前の長い休みを利用して、就職希望先の放送局に
アルバイトで入った私。あなたは、ある番組のFDだった。
一目惚れなんて信じてなかったけれど、一目惚れだったのかも
しれない。好きだと気付くのに、そう時間は必要なかったから。
そして、あなたも同じ気持ちだと分かったのも同じ頃だった。
ほとんど座っていることのない仕事だったけれど、あこがれの
放送局で働けて、あなたに出会えて、バイト仲間に恵まれて、
楽しくて仕方のない毎日だった。
でも、そんな日々を就職という名の壁が塞いだ。就職希望なのに
就職が決まっていない私に、大学から電話がかかったのだ。
「求人中の会社があるから、受けてみないか。」と。私は
試験を受けて、その会社に就職した。
同じ年に、あなたは報道へと異動になり休みが合わなくなった。
何とか休みを合わせても、休めるかどうかが当日にならないと
分からない日々が続き、休めなくなることも多かった。
会えない時間は寂しさを募らせ、私はそれを言葉にした。
仕事だから仕方がないと思いながら・・・。言葉をきっかけに
少しずつ出来たすき間は、「好き」という思いだけでは
埋められない程に広がり、ついにその日が来た。
「別れよう。」
「うん。」
毎日夢を見るくらい好きなのに、なぜか「うん」と言って
しまった。自分でも、自分が分からなかった。
2人で過ごす3度目の冬は来なかった。
就職した会社は、仕事を覚えると退屈な場所に変わった。
「女性は結婚したら辞めてもらいます。」とは言わないまでも、
結婚したら上司に呼ばれると知った。呼ばれた後に辞める先輩を
何人も見て、がっかりした。
その頃から、放送局への転職を考えるようになった。本を買って
放送の勉強をしていたある日、前にバイトをしていた放送局で
ディレクター入門講座が始まり、受講することにした。
久しぶりに行った放送局には、懐かしい笑顔があふれていた。
でも、あなたには会えなかった。会いたかった。
数ヶ月の講座はアッと言う間に終わり、講座を受けても
就職出来る訳ではなかったけれど、会社は辞めた。
無職になったのにホッとしている自分に驚いた。
海外旅行に行ったり習い事をしたりしていたが、貯金が
少なくなって来たので、バイトを始めた。そこでの出会いが
きっかけで、結婚した。
夫は優しかったが仕事が忙しく、帰るのはいつも日付が
変わってからだった。夜の静けさは嫌いじゃなかったので、
帰りの遅い夫を待つ時間は苦痛ではなかった。
ドラマの時間が終わった頃に始まる番組を、毎日見ていた。
番組の最後に流れるスタッフの名前に、あなたの名前を
見付けた。
その後の放送で、茅ヶ崎・江ノ島の特集が組まれた。
曲はサザンばかりだった。なぜか勝手に、私のことを
覚えてくれていると思った。
番組のHPに書き込みをしたら、あなたから返事が来た。
返事もうれしかったが、あなたが結婚していないことも
なぜかうれしかった。今さらどうしようもないのに・・・。
その後何度かメールを交換したけれど、いつの間にか途切れた。
そして去年の冬、私の誕生日に、久しぶりにメールが来た。
「誕生日おめでとう。来年のクリスマスに、札幌で待ってる。」
今年のクリスマスに、私は札幌へ行こうとしている。
2001-11-27 まふゆ
|
|