桑田佳祐/白い恋人達 あなたの冬の恋物語
 
「冬は嫌い。寒いし乾燥するし・・・景色が灰色なんだもの」
そう言う私に彼は、
「そうかなあ。空は澄んでてきれいだし、星だってよく見える し、ストーブとかセーターとか、冬ってかえって暖かい感じがし て、俺は好きだな」
と言った。
「それはあなたが寂しくないからよ」
と私は言おうとしたがやめた。この人に私の寂しさがわかるはず もない。
当時、私は奥さんのいる人と付き合っていた。奥さんに申しわけ ないと思いながら、自分に素直に生きたいなんて、いいわけをし ながら付き合っていた。だからクリスマスも、初詣も、バレンタ インも、一人なのは自業自得・・・と思ってはみたものの、友達が彼 とクリスマスにスキーに行ったなんて話を聞くと、もう寂しくて 寂しくてたまらなくなる。そしてとうとうやってしまった、イブ の日に彼の会社の前で待ち伏せ。プレゼントを渡して、一時間だ けでも一緒にいられたらって、そう思ったのだ。会社から同僚ら しき人と出てきた彼は私を見つけて、あからさまに「まずい」っ て顔をした、そして私に話しかけることもなく、通り過ぎていっ た。その時私は、この人と付き合ってる限り冬を好きになること はないだろうって思った。

あれから何年たっただろう、今では私は冬が大好きだ。やかん のかかった石油ストーブの側から、寒がりの娘が離れない。娘に 向かって私は「学校に遅れるわよ」と親らしいことを言ってみ る。会社に出かける夫が言った。
「冬は嫌いだよ。着ぶくれで電車が混むから」
「私は結構好きだよ、冬」
と私は答えた。
 
 
2001-11-27 そら
 
 
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