桑田佳祐/白い恋人達 あなたの冬の恋物語
 
寒い12月、コート、マフラー。

わたしがヒューと出会ったのは、ホームステイで訪れた、オー ストラリアでした。わたしもまだ高校生で、初めての海外生 活。不安はいっぱいでも、毎日きらきらしていました。ヒュー は、わたしのホストブラザーの友達でした。出会った瞬間、恋 に落ちました。ホストブラザー、わたし、ヒューで、いろいろ なところに遊びにいきました。まるで、兄妹のようでした。2 週間ぐらい過ぎたころから、わたしとヒューは互いの好意を確 認しあうようになりました。わたしが17さい、ヒューは15 さい。他の人から見ればままごとのようかもしれませんが、2 ヶ月、真剣に向き合いました。
でも、わたしは日本に帰らなければいけません。帰る日、若い わたしたちは約束をするのが精一杯でした。5年後、もう一 度、わたしは、ここに来る。そのとき、まだお互い好きだった ら、また好きになったら、"恋人"になろう。

日本に帰って、新しい生活も始まりました。ヒューとはあまり 連絡をとらないようにしていました。お互いをしばりたくない とおもっていたから。お互い若いから。わたしはいい思い出が できたんだと言い聞かせながらの生活でした。思い出。

恋人もできました。一緒にいて、すごく楽しくて、安心できる 人。春夏秋冬、クリスマスも、お正月も、彼と一緒でした。
ずっと、この人といるんだろうな。いいな。彼にも、ヒューの ことを話していました。憧れた人だと。でも、約束のことは話 しませんでした。ヒューもたぶん話してはいないでしょう。
ニックの写真を見るたびに思いました。今ごろ大学生かな?何 してるかな?ずっとその思いは押さえ付けていました。わたし はいい思い出をもらったんだ。今の彼が大好き。しかし、約束 が近づくにつれて、思いは強くなりました。ヒューを思いなが ら、彼とつき合うわたしが大嫌いになりました。彼と迎える2 回目のクリスマスのまえの12月、わたしは決心しました。雪 はたくさん降っていました。

「忘れられない人がいる。」
それだけで、彼はすぐにわかりました。「なんか、どこか遠く を見ているみたいだった。」
「彼に会いに行きたい。」
そのとき、わたしはわたし以外の人に初めて約束の話をしまし た。
彼は止めようとしてくれました。僕との今の生活を大事にして と。もし、ヒューとだめだったら、帰ってきてほしい。とまで 言ってくれたとき、涙が出てきました。甘えることもできまし た。でも、そんなこと、できませんでした。「ごめんなさい。 ありがとう。」と言って、雪の中を走って帰りました。後ろ は、振り返りませんでした。

今、わたしはオーストラリアにいます。ヒューに会いました。 来月、一緒に日本に行ってみる予定です。こちらのクリスマス は真夏です。雪なんて、一年中見ることもありません。でも、 クリスマスが近づくと、海から遠くを見ると、彼のことを思い 出します。寒い12月、コート、マフラー。

一度だけ、彼からメールが届きました。
「元気ですか?幸せだったら教えて下さい。」

「ありがとう。とても幸せです。ありがとう。」
これが、今のわたしの返事となるでしょう。
 
 
2001-11-04 さや
 
 
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