桑田佳祐/白い恋人達 あなたの冬の恋物語
 
あれから、もう7年も経つんだなぁ。僕と彼女の遠距離恋愛・・
大学を卒業して、大阪のある会社に勤める事になった僕は同じ部署の彼女と出会いました。けれど仕事がうまくいかず結局4ヶ月で僕は退社。地元の福岡に帰ることになりました。その時は、まだ、こんなにも遠距離恋愛がツライものとは考えもしませんでした。携帯もメールもまだなかった、その頃。普段、唯一僕らが楽しみにしていた事は夜、電話で他愛もない話をする事。「来月そっちに遊びに行くね。」の一言がものすごく嬉しく思え僕に勇気を与えてくれました。再就職先が中々見つからず貯金も使い果たし彼女ばかりが僕の所へ来る事が続き、焦りと情けなさで毎日が嫌になりかけた4ヶ月間。とうとう冬がやってくるいう時僕は心から思いました。「クリスマスは俺が彼女の所に行こう!」夜の10時から朝方まで運送屋でバイトをし僕は彼女にクリスマス・プレゼントとして指輪を買いました。そして彼女に電話をしたのを今でも覚えています。「明後日は俺が久美の所へ行くよ!」24日の夕方、ある会社の面接があり、それを終えて僕は最終の新幹線で大阪へと向かいました。僕は座席から寒さで真っ暗な外の景色をみながら、1ヶ月ぶりに彼女の顔が見れるんだという、窓に反射して映る、自分のたまらない笑顔を見て楽しんでいました。新大阪に着き彼女に電話をした後、深呼吸をすると「よし!」と気合を入れタクシーを拾い彼女が住む町へと走らせました。彼女の部屋へ向かう途中彼女との、この4ヶ月間を思い出していました。「まだ仕事決まらないの?」「私ばっかり会いに行ってる・・たまには会いにきて欲しい!」「いつまで遠恋するのかな?・・普通のカップルは仕事が終わってご飯とか食べに行けるのに・・」「早く仕事決めてよ・・」「ごめん。私がわがままなんよね・・」こんな彼女の言葉に僕は何も言う事ができず、ただ分かって欲しいと返すしかありませんでした。僕には、やりたい仕事があって、それを諦める事ができませんでした。彼女は、とにかく夢ばかり言わないで仕事を見つけて欲しいと、しきりに僕に訴えてました。毎晩のように電話で話していた二人でしたが、4ヶ月の間で僕らの中に少しだけ溝ができていたのは確かなことでした。そんな事を思い出していると、いつのまにか待ち合わせ場所のコンビニエンス・ストアに着いていました。タクシーから降りた僕はマフラーを首に巻きコンビニエンス・ストアの中にも入らず、ただ彼女の住んでいる部屋の方向を見ていました。「えっ?イヴの日こっちに来るの?お金大丈夫?でも楽しみ!」彼女の言葉は本心なんだろうか?もしかしたら、このまま二人が駄目になってしまった方がいい。そうしたら、つらい遠距離恋愛も終わる。そう思ってるんじゃないんだろうか?僕は彼女に会える期待と不安で押し潰されそうになりました。せつない僕の白い息が夜空にそっと吸い込まれていきました。すると遠くから、こちらに向かってくる自転車を見つけました。じっと見ていると、それはまぎれもなく彼女でした。彼女は小さな体で一生懸命、自転車をこいでいました。僕は、いつのまにか彼女の方向へと走り出していました。そして彼女が僕の前に来た時、僕は彼女を抱きしめていました。僕は彼女の笑顔を見ていました。そして好きだと言っていました。彼女は真っ赤になった頬を膨らませて微笑んでいました。「寒いね。」と僕が言うと彼女は「こっちの方が暖かいよ!」とコートのポケットから手編みのマフラーを出し、そっと巻いてくれました。僕も指輪を出しました。夜空に吸い込まれそうな二人の白い息が、今度は僕らを暖かくさせてくれたような気がしました。
彼女とはそれから2年程付き合いましたが、結局別れてしまいました。彼女はそれから少しして結婚して今では子供もいるようです。僕は、まだ独身ですが好きな彼女もいます。今年、その彼女と札幌のクリスマス・ライブに行けたらいいなって思ってます。でも、あの7年前のクリスマス・イブの日のことは今でも忘れません。

 
 
2001-10-06 おーるどまん
 
 
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