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桑田佳祐 Act Against AIDS 2004
THE GOLDEN AGE OF BRITISH ROCK
〜愛と青春の英国ロック〜
12/2ライブ・レポート
 
 
 
 会場のパシフィコ横浜は、今回で12年目を迎えたA・A・Aのコンサートを心待ちにしていた多くの音楽ファンで埋め尽くされていました。ある人はブリティッシュ・ロッカーのいでたちで、また、ある人はサンタクロースの格好で……そう、観客も、このコンサートを彩る重要なファクターなのです。開演前のBGMは、ハーマンズ・ハーミッツ、アニマルズなど英国ロックの名曲たち。
そして、クィーンの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」が会場内に流れると同時に、会場のボルテージは急上昇、オール・スタンディングで、ものすごい拍手と歓声の渦が巻き起こりました。
それを待ち受けるかのように暗転、映画「007」のテーマ曲とともに、レーザー光線がステージ中央に、ユニオン・ジャックを映し出します。
 そしてスクリーンに“ピーター・バカラン”と名乗る、どこかで見たような、ちょっと怪しいDJが登場。「ブリティッシュ・ロックのルーツは、スキッフルにあり…」と、うんちくをひと言。その解説が終わると同時に、われらの桑田さんがミニ・スカートの女性ダンサーとともにステージに登場。黒のフォーマル・スーツに身を包み、とてもダンディ!
 
 M1はヤードバーズの「For Your Love」。ヤードバーズと言えば、イギリスが生んだ3大ギタリスト、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジを輩出した伝説のバンド。この曲を始めに、前半は英国ロックの基盤と言える1960年代の楽曲が続きます。
 M2は、イギリスはニューキャッスル出身のバンドで、ブリティッシュ・ロック・シーンにおいて最も黒っぽい(R&B色が強い)グループだと言われたアニマルズの「Boom Boom」。オリジナルはアメリカのブルース・シンガー、ジョン・リー・フッカー。ブルースとロックが見事に融合した、実にカッコいい曲です。
 M3は、ブリティッシュ・ロックの異端児レイ・デイビス率いるキンクスの名曲「You Really Got Me」。1978年には、アメリカのロック・バンド、バン・ヘイレンがカバーし大ヒットさせました。
PIC ここでMCタイム。MCの途中で、なぜか桑田さんの口調は波田陽区に……いいんじゃない。MCに続いては「Do Wah Diddy Diddy」。ロンドンのクラブ・シーンからデビューした、マンフレッド・マン1964年の大ヒット曲。このマンフレッド・マンは、後にマンフレッド・マンズ・アース・バンドと名前を変え、1976年に「ブラインデッド・バイ・ザ・ライト」と言う曲を、これまた大ヒットさせています。ちなみに、この曲の作者は、かのブルース・スプリングスティーン。
 M5は、貴公子5人組と呼ばれたイケメン集団、デイブ・クラーク・ファイブの「Because」。甘く切ないメロディーが心に染み渡る、美しいラブソングです。
 M6は、十二弦ギターのイントロが印象的なホリーズの「Bus Stop」。歌の中に登場する“雨の風景”にあわせて、女性ダンサーたちが、カラフルな傘とレインコート姿で踊っていました。ホリーズのハイトーン担当のグラハム・ナッシュは、その美声を買われて、後にアメリカでクロスビー・スティスル・ナッシュ&ヤングに参加。「ティーチ・ユア・チルドレン」他、沢山の名曲を残しています。
 続いては、イギリスのプレスリーと呼ばれた超人気シンガー、クリフ・リチャードの「Early In The Morning(しあわせの朝)」。クリフ・リチャードは、この曲を1969年にヒットさせていますが、1970年に発表された、イギリスのロック・バンド、バニティ・フェアのバージョンも人気を博しました。  M8はR&Bにジャズのフレイバーをプラスしたゾンビーズの「She's Not There」。1977年には、サンタナがカバーしヒットさせています。それにしても、ゾンビーズってすごいバンド名ですよね。だって「オバケたち」ってことですから。  M9はトロッグス1966年のヒット曲「Wild Thing」。今では大リーグ御用達のナンバー。野球の攻撃の場面でかかるあの曲です。余談ながらトロッグスのリード・ボーカリスト、レグ・プレスリー(本名はレグ・ボール)は、その声があまりにワイセツだと言われ、放送禁止になったことも……(ちなみにエルビス・プレスリーは、その腰つきがワイセツだと言われましたが)
PIC そしてM10は、ビートルズと並ぶブリティッシュ・ロックの雄、ローリング・ストーンズの「Ruby Tuesday」。荒々しいビート三昧のストーンズのレパートリーの中では、もっともメロディックで官能的とも言える作品です。この曲の途中で、桑田さんは、胸ポケットにあった赤いバラの花を会場にプレゼント。ゲットできた人は、本当にラッキー!
 
PIC ここでMCタイム。ここでは60年代後半に生まれたサブカルチャー「モッズ」についての講釈。「モッズ」とは、クール系不良とでも呼べるトータル・ファション。ヴェスパのスクーターに軍用コート、ジーンズにネクタイ……と言ったファッションで、夜は過激なロックを楽しむ、そんな若者たちのことを、モッズ族と呼びました。そして、モッズ族の神様みたいなグループの曲が炸裂。ザ・フーの「The Kids Are Alright」「Summertime Blues」
ザ・フーは“20年早かったパンク・バンド”とも呼ばれた過激なバンド。ステージではよくドラム・セットをぶっ壊していましたっけ。この曲中、桑田さんをはじめとした3名のギター陣は、フーのギタリスト、ピート・タウンゼントのハンマー奏法を真似て、腕をグワングワン廻して弾いていました。かっこよくて、ため息がフ〜!
 続いてスクリーンに、“ピーター・バカラン”が登場。プログレッシブ・ロックについてひとうんちく。プログレッシブ・ロックとは、1970年前後に生まれた斬新なロック。それまでの音楽の既成概念を捨て去り、アルバム主義かつ音楽性の高いロックの創造を目指した音楽のこと。言い換えれば、あまりにも大きくなりすぎたビートルズの呪縛から脱皮を模索した音楽とも言えましょう。そこでプログレッシブ・ロックの代表格ピンク・フロイドの「Wish You Were Here」「Time」そして、キング・クリムゾンの「クリムゾンキングの宮殿」「21th Century Schizoid Man Including Mirrors」の4曲を演奏。ピンク・フロイドのナンバーには、巨大な物体が空を飛び、キング・クリムゾンのナンバーでは、壮大な音楽とともに幻想的な映像に踊るバレリーナと道化師。観客は、夢と幻の狭間をユラユラと浮遊したのでありました。
 プログレに続いては、ビートルズを超えたロック・バンドの異名を取る、レッド・ツッペリンの「Immigrant Song」。この曲は実に難易度の高い曲です。なぜなら、この曲を歌いこなすにはとてつもない高音域が要求されるからです。でも、そこは流石、桑田さん。なんなくロバート・プラントばりの高音を、脳天から出していました。
 続いてスクリーンには、“ピーター・バカラン”に代って、“シビヤ・ヨウイチ”なる音楽評論家が出現。シンガー・アンド・ソングライターについて、軽い解説を語っています。シンガー・アンド・ソングライターとは、自分で作った曲を自分で演奏すると言う、今では常識となっているミュージシャン形態。でも、それが当たり前になったのは1970年代初頭のこと。キャロル・キングやジェームス・テイラー、ジョニ・ミッチェルなどが基礎を築きました。ステージでは、イギリスを代表する2人のシンガー・アンド・ソングライターの作品が……
 PICPICまずは、ギルバート・オサリバンの「Alone Again」。曲の途中で原由子さんが登場し、2コーラス目からボーカルに参加してくれました。なんとも贅沢! そして、もう一曲は、最近なぜか男性と結婚式を挙げたことが話題になったエルトン・ジョンの1973年の作品「Goodbye Yellow Brick Road」。聴くほどに心が切なくなる美しい曲です。でも、男同士の愛を歌った曲ではありません、念のため。
 
 気がつけば、コンサートは、中盤から終盤に……。スクリーンに、再び評論家風“シビヤ・ヨウイチ”が登場。怪しい眼差しで語るは「グラム・ロック」について……。「グラム・ロック」とは、きらびやかな化粧を施し、両性具有的なイメージを打ち出した演劇的色彩のあるロックつまり、男と女との領域を超えた、ロマンティズムの世界かな。
 M20〜M23までは、そのグラム・ロックの代表的アーティスト、T.Rexとデイヴィッド・ボウイの曲が2曲ずつ。PIC「Get It On」「Metal Guru」そして「The Jean Genie」「Suffragette City」……思い起こせば、デイヴィッド・ボウイは「僕はバイセクシュアルだ!」と公言、童貞も処女も、思わずこの発言にびっくりしたものです。また「Suffragette City」がステージで演奏されているとき、場内には白い大きな風船が、バロ〜ン、バロ〜ンと跳ね上がっていました(よく割れないものです)。
 続いてBGMに「威風堂々」が流れる中、スクリーンにはブリティッシュ・ロックのレコード・ジャケットが、連続して映し出されました。まるでベスト・ヒットUSAのオープニングみたいです。ベスト・ヒットUKと言ったほうが正しいかもしれませんが。
 そして聞こえてきたのは、有名なギターのリフ。かのローリング・ストーンズの「Jumpin'Jack Flash」です。演奏中、スクリーンには“ベロ・マーク”とユニオン・ジャックが交互にフラッシュしていました。
 そろそろコンサートも終盤です。
PIC ここでブリティッシュ・ロックの一大革命となった曲が登場します。
「God Save The Queen」。パンクロックの覇者、セックス・ピストルズの代表曲です。この曲の偉大さと言えば、音楽のあり方のルールを撤廃し“なんでもあり”にしたところ。演奏は下手でもいいし、歌詞は放送禁止用語のてんこ盛りみたいな、それがパンク!
 しかし、このアナーキーなパンクロックを仕掛けたのは、セックス・ピストルズそのものなのか、それともプロデューサーのマルコム・マクラーレン仕業なのか、今でも論議が分かれています。そんなことはどうでも良いとして、桑田さんのバージョンは、セックス・ピストルズよりも、ずっとアナーキーな感じがしましたけど……。
 アナーキーな曲の後に、ちょっとお口直しでしょうか、平松八千代さんのボーカルで、賛美歌「Amazing Grace」が歌われました。激辛の後のスィーツの味でしょうか。そして地響きのようなイントロに続き、クィーンの「We Will Rock You」。観客も音楽にあわせて拳を突き上げ、興奮のるつぼに! フレディ・マーキュリーが降りてきました!
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PIC それに追い討ちをかけるように、ブリティッシュ・ロックの王道、ディープ・パープルの「Highway Star」へと続きます。キーボードの方に目を向けると、原由子さんがいるではありませんか。オリジナルのジョン・ロードに負けぬ完コピの素晴らしいキーボードを聞かせてくれました。そして桑田さんのボーカル、迫力満点、完璧でした! ああ〜感動! 感激! 感涙!
 曲終わりと同時に、桑田さんの胴上げが行われました! まるで優勝の気分です!
 
PIC ここからはアンコール・タイム。メンバーは全員、A・A・Aのお揃いのTシャツを着て登場です。
 EN1は、知る人ぞ知る、ブリティッシュ・ロック・グループ、スィートの「Fox On The Run」。スィートは、1970年代活躍したポップなロック・バンド。「リトル・ウィリー」「ボールルーム・ブリッツ」「ラブ・イズ・ライク・オキシゲン」などのヒットがあります。そのポップ性は、ベイシティー・ローラーズあたりに引き継がれています。
 EN2は、ポリスの名曲「Every Breath You Take」。かのスティングが在籍していたバンドです。これは本当かどうか定かではありませんが、ポリスがデビューしたきっかけは、同じレコード会社に所属していたカーペンターズのレコード制作費があまりにかかりすぎることに頭を悩ましていたレコード会社のプロデューサーが、「イギリスに3人組みで、やたら上手くて、録音の費用がとても安くできるグループがいる」と聞き、それならホイとデビューさせたのがポリスだと言う話。つまり、ポリスは、芸術性より経済性でチャンスを掴んだのかもしれません(この手の話は、あまり信用しないほうが良いかも)。とにかく、桑田さんは、この難易度の高い曲を、余裕を持って、情感豊かに歌ってくれました。紫の照明が、曲によくマッチしていました。
 そしてMC。エイズに対する思いと願いをひと言。そう、本題を忘れてはいけません。
 ラストのラストは、この曲。ロック史上に残る名曲プロコル・ハルムの「A Whiter Shade Of Pale」。この曲は、バッハの「G線上のアリア」をベースにした曲だと言われています。歌詞は読めば読むほど難解な曲でもあります。でも、とてつもなく壮大で、ロマンティックな曲でもあります。日本では、その昔、なぜかディスコの終わりを告げる曲としてよく使われました。若いカップルが、未来に不安と期待を抱きつつ、この曲で最後のチークを踊ったものです。パシフィコ横浜のミラー・ボールに照らされて、観客の上げた両手が緩やかな波のように揺れていました。PIC
 そして、いつしか会場には、サザンオールスターズの「クリスマス・ラブ」が流れています。一生に一度しか体験できない、このA・A・Aコンサート。この貴重な一瞬を、観客のひとりとして共有できたことに「ありがとう!」って言いたい夜でした。
 
佐藤輝夫(シャ・ラ・ラ・カンパニー)
カメラマン:菊地英二
 
 
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