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「ニューアルバムは、ロックバンドテイストを強調したものにしたい」という、2002年初頭の桑田佳祐自身の意思表明のもと、急遽、選りすぐりのミュージシャン達がビクタースタジオ401 stに集められ、レコーディングがスタートした。その初日の2月7日から、9月3日の完成に至るまで、生のバンドセッションにとことんこだわったレコーディングが続けられてきた。
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ニューアルバムを読み解くキーワードは "バンドセッション"。昨年の大ヒットシングル「波乗りジョニー」や「白い恋人達」のレコーディングとは、形もアプローチも全く異なったスタイルで行われた。バンドメンバー(バンド名は "桑田佳祐&THE BALDING COMPANY")は、斎藤誠 (Guitars)、角田俊介 (Bass)、片山敦夫 (Keyboards)、小田原豊 (Drums)&河村智康 (Drums)。以上の強力なミュージシャンと、エンジニアの林憲一&マニピュレーターの角谷仁宣という最少人数で、異常ともいえる程のテンションの中、究極のバンドサウンドは練り上げられていった。
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そして、音楽の女神との長い格闘の末、正に "ロックアルバム" と呼ぶに相応しい、猛々しくも美しいエネルギーが充満した作品が、遂に完成した。桑田はレコーディングの最中、今回のアルバムでは自分自身のことを歌いたいと言っていた。完成した作品を改めて聴いてみると、正に今の桑田佳祐の全てが注ぎ込まれていると思う。また振り返ってみれば、長いレコーディングの間ずっと、桑田は自分自身が歌い続ける意味を探していた様にも思える。自ずと出来上がってきた曲は、彼の音楽的ルーツであるロックがかつて持っていた瑞々しい精神と共に、自分の人生での喜びや悲哀や矛盾など色々なものを内包している。
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今作品を桑田自身は、自分のことを歌ったパーソナルな作品だと思っているかもしれないが、現代の日本に生きる人にとっては、それぞれが自分自身の歌だと思うのではないだろうか。ロックを少しでも聴いてきた人なら誰もが反応しそうな名曲のタイトル等々、相変わらずの遊び心溢れる言葉が沢山盛り込まれている反面、テロ、飢え、老後の不安、成り金、闇、イジメ、輪姦、ドンパチ等の、通常、歌詞には使われることが無い時代を写し取った余りにも生々しい言葉が、聴き終わった後も心の底から離れないからだ。そもそも己に対する皮肉やと自負とが複雑に入り交じったアルバムタイトルの「ROCK AND ROLL HERO」自体が、桑田佳祐自身のみならず、あなたや私、家族や地域社会、さらには今の日本を象徴しているように思える。
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今回のニューアルバムは、特に詞の面において、桑田佳祐本人の遊び心から来る言葉のレトリックや、深層心理から沸き上がるかのようなリアルな現実感を、率直に歌にしたものであるがゆえ、ある種のヘビーな印象を抱かれる方がいるかもしれない。しかし、と同時に何かが心の奥底から沸き上がって来ることを誰もが気付くはずだ。なぜなら、今まで何度も書いてきたことだが、桑田佳祐の歌は希望の歌だからだ。
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タイシタレーベル 松元直樹
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